【講演レポート】なぜこれからは医療介護『福祉』連携が求められるのか
医療経済や医療・介護政策に関する研究を行う一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構が開催する「地域包括ケアシステム特別オープンセミナー」の第9回が「地域における医療介護福祉連携のこれから~循環する姿へ~」をテーマに2023年8月4日(金)に開催されました。
同セミナーでは、埼玉県立大学理事長・慶應義塾大学名誉教授の田中滋氏が「なぜこれからは医療介護『福祉』連携が求められるのか」というテーマで基調講演を行いました。
人材不足は、医療介護業界だけの問題ではない
少子化による急速な人口減少と、高齢者人口がピークに達する2040年はもうまもなくやってきます。3.5人に1人が65歳となる中で、田中氏は「変えられない未来と変えられる未来がある」といいます。
2040年問題で多く議論されているのは、労働力不足です。これに対し、介護福祉業界では処遇改善や働き方改革等が行われてきています。
「人材不足は、医療介護業界だけではありません。運輸や建設・土木、公立学校の教員や公務員等あらゆる分野で人が減っているのです。そのため、処遇改善や働き方改革をしたところで、人材が増えるわけではありません。もちろんこれらはしなければ人材は減っていきますが、処遇改善と働き方改革は必要条件であって、十分条件ではなくなっているのです」(田中氏)
急性期医療と介護の連携はより一層の進展を図る必要がある
田中氏はまた、急性期入院患者像の変化を取り上げています。もともと元気だった高齢者が脳疾患等で救急搬送され、介護状態になるという「元気→急性期→介護」という流れを一般的にはイメージしますが、近年では、急性期入院前から介護状態、もしくはフレイルの状態である場合が多くなっています。
産業医大の松田晋哉教授の調査では、股関節骨折、心不全、肺炎での救急搬送では、入院前の半数が介護保険利用者だったことがわかっています。現在は、ひとつの疾患で入院する人というよりも、入院する理由となった疾患に加えて認知症や脱水、低栄養などを併発していることが多いといいます。さらに、急性期の入院ではADLの低下も懸念されるため、急性期医療と介護の連携はより一層の進展を図っていく必要があると解説しました。
2022年現在、65歳以上の人口は約3600万人。平均寿命・健康寿命の延伸によって、元気な高齢者も増えてきています。田中氏は「急性期の入院に加えて、85歳を過ぎると加齢とパートナーの死亡などのライフイベントがリスクファクターとなる。今健康だとしても、85歳以上になれば何らかの生活支援が必要となる」と話します。
地域包括ケアシステムは広がりを見せていますが、地域によってその形を変えていく必要があります。「医療を受けたからといって幸せになるわけでもなく、介護を受けることが人生の目的ではない。社会参加への支援や社会的包摂を考えた支援が必要になってくる」と講演を締めました。
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