2023.09.12 職員研修

【認知症介護実践者研修とは?】厚生労働省が定める認知症介護研修の1つ

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認知症介護のプロとして、専門的な技術や心得などを習得し介護サービスの質を高めることを目的に実施されています。

認知症対応型の介護事業所で働いている人にとって、自分が認知症介護のプロであることを証明できる資格として多くの人が受けている研修です。

この記事では、そんな認知症介護実践者研修の概要受講条件受講にかかる費用受けるメリットなどを詳しく解説します。

認知症介護実践者研修とは?

認知症介護実践者研修とは、厚生労働省が規定する実施要項に基づき、各都道府県の自治体が実施する、認知症介護に関する研修の1つです。

受講するための資格(条件)や費用などは、自治体によって異なります。

ここでは多くの自治体で採用している内容と、一例として東京都の研修を合わせて紹介します。

自分が受講する研修について詳しく知りたい場合、自身が勤める事業所がある自治体のホームページを確認しましょう。

次の表に、認知症介護実践者研修の概要についてまとめました。

認知症介護実践者研修の概要
内容実践的な認知症ケアについて学ぶ
受講するための資格介護職員として2年程度の実務経験など
※都道府県により異なる
受講する方法各自治体のホームページを確認の上、申込書をダウンロード
必要書類と共に所定の送り先に送付
受講費用都道府県により異なる
相場:3万円程度
受講時間講義・演習:6~7日程度
自施設での実習:14~30日程度
受講するメリット就職・転職で活用できる
給与アップが見込める

厚生労働省が規定する認知症介護研修は複数あり、介護職員としての経歴や勤務先での役職などで受講する研修が異なります。

現在介護に関する資格を持っていない、あるいは介護職員としての経歴が短い人は「認知症介護基礎研修」から受講します。

この記事で解説している認知症介護実践者研修は、認知症介護を行う職員として2年ほど働き、より認知症介護について理解を深めたい、技術を磨きたいという職員を対象に想定しています。

介護の研修・資格一覧はこちら>>

認知症介護に関する研修の種類と体系については、東京都福祉局が公開している体系図を一例として掲載します。

▼東京都の認知症介護研修の体系図

都道府県によっては、認知症対応型の介護事業所の計画作成担当者や管理者は認知症介護実践者研修の修了者を配置する義務があります。

参考:東京都福祉局 東京都認知症介護研修の概要 (令和5年7月3日閲覧)

認知症介護実践者研修は配置義務のある重要な研修のひとつなので、就職や転職時にも有利に働く場合があります。

受講する要件

認知症介護実践者研修の受講要件(受験資格)は実施する自治体ごとに異なります。

ここでは一例として東京都の要件を紹介します。

以下の要件を全て満たしている方
(1)東京都内の介護保険施設・事業所(居宅介護支援事業所を除く)(※1)に従事している介護職員等※1:原則として、足立・豊島区内の介護保険施設・事業所は、本研修のお申込みができません。各区が実施する「認知症介護実践者研修」にお申込みください。詳細は、各区の「認知症介護研修」担当部署 にお問合せください。
(2)原則として、認知症の人の介護に関する経験が2年程度以上(※2・3)※2:事務職、施設長、生活相談員等としての経験のみでは、認知症の介護経験とは見なしません。※3:「介護福祉士と同等の知識を有する方」及び「各施設において介護・看護のチームリーダーに類する立場(主任・副主任・ユニットリーダー等)にある方、または立場になる予定の方」を想定しています。
引用:東京都福祉局 東京都認知症介護研修の概要 (令和5年7月3日閲覧)

要約すると、自治体管轄内にある事業所で働いている職員で、認知症介護の経験が2年以上ある人が条件だと書かれています。

受講する方法

認知症介護実践者研修を受講する方法は、勤務先がある自治体のホームページから申込書をダウンロードし、必要事項を記入、必要書類を揃えた上で、所定の申し込み先に送付します。

ここでは埼玉県の認知症介護実践者研修で求められた必要書類を、例として紹介します。

・受講申込書

・受講意思確認書

・返信用封筒

参考:埼玉県 人材の養成・支援

受講方法、必要書類は自治体によって異なることがあるため、実際の申し込みの際は勤め先がある自治体のホームページを確認しましょう。

受講費用

認知症介護実践者研修の費用は、研修を実施する自治体によって無料から3万円程度と様々です。

実際の受講費用は、勤め先がある自治体のホームページで確認できます。

カリキュラムの内容と難易度

認知症介護実践者研修のカリキュラムは次のようになっています。

ただし各都道府県・自治体で研修の内容が異なることがあります。

認知症ケアの理念・倫理と意思決定支援(180分)
生活支援のためのケアの演習1(300分)
QOL を高める活動と評価の観点(60分)
家族介護者の理解と支援方法(90分)
権利擁護の視点に基づく支援(90分)
地域資源の理解とケアへの活用(120分)
学習成果の実践展開と共有(60分)
生活支援のためのケアの演習2(行動・心理症状)(240分)
アセスメントとケアの実践の基本(300分)
職場実習の課題設定(240分)
職場実習(アセスメントとケアの実践) (実習4週間)
職場実習評価(180分)

参考:認知症介護情報ネットワーク「新カリキュラム改訂にともなう各科目シラバス変更のポイントと運用のヒント」令和3年6月1日版

研修修了の難易度は、合格試験がないこともあり高くはありません。

ただし、講義は認知症介護に関する専門的な内容であり、さらに自事業所での実習やレポート作成など応用力が問われます。

講義の内容を踏まえ実際の現場で生かせる理解度が必要です。

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認知症介護実践者研修を受けるメリット

認知症介護実践者研修を修了することは、介護職員側にどのようなメリットがあるのでしょうか。

ここでは主なメリットを3つ紹介します。

1.認知症介護のプロとして信用を得られる

メリット1つ目は、「認知症介護のプロとして信用を得られる」ことです。

認知症介護実践者研修を受講することで、厚労省が定めたカリキュラムをもとに認知症介護について学び、スキルを磨くことができます。

研修を修了することで、自己流ではなく正しい認知症介護の知識やスキルを持っていると見なされ、勤務先やサービス利用者から信用を得られるでしょう。

2.有資格者として就職・転職が有利になる

メリット2つ目は、「有資格者として就職・転職が有利になる」ことです。

介護業界に就職する人は、無資格・業界未経験の人が多いのが現状です。

その中で、認知症介護実践者研修を修了している人は即戦力として採用されやすいと言えます。

参考:9割の介護施設経営層が「人材マネジメント」に課題 採用負担が重く

介護事業所の種類によっては、認知症介護実践者研修修了者の配置が義務付けられているものもあります。

就職や転職時に有利になる材料のひとつとなるでしょう。

3.介護職員としてキャリアアップの一歩が踏める

メリット3つ目は、「介護職員としてキャリアアップの一歩が踏める」ことです。

認知症対応型の介護事業所では、管理者や計画作成担当者になる人は認知症介護実践者研修の修了が義務付けられていることがあります。

施設で重要なポストを目指していない場合でも、認知症介護実践者研修の上位研修として、「認知症介護実践リーダー研修」があります。

これは、認知症介護実践者研修を修了して1年以上経過している人(その他条件あり)を対象に、認知症ケア施設のチームリーダーを養成する研修です。

認知症対応型の介護事業所でキャリアアップしたい場合、認知症介護実践者研修の修了は重要なステップになります。

4.資格手当が支給される事業所もある

メリット4つ目は、「資格手当が支給される事業所もある」ことです。

事業所によっては認知症介護実践者研修修了者の配置が義務付けられていることもあり、修了している人の優遇措置として資格手当を支給する事業所もあります。

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認知症介護に関する主要な研修

厚労省が要綱を規定している認知症介護関連の研修は、この記事で紹介している認知症介護実践者研修以外にも複数あります。

認知症介護に関する基礎を学ぶ「認知症介護基礎研修」から始まり、「認知症介護実践者研修」→「認知症介護実践リーダー研修」→「認知症介護指導者養成研修」とレベルアップしていきます。

画像引用:認知症介護情報ネットワーク(令和5年7月3日閲覧)

どの研修を受けるかは、自身の認知症介護スキルやキャリアプランに合わせて選択します。

ここでは認知症介護実践者研修以外の認知症介護研修について、詳しく解説します。

1.認知症介護基礎研修

認知症介護基礎研修とは、認知症とそのケア方法の基本的な知識とスキルを学ぶ研修です。

研修はeラーニング形式で、150分ほどの動画を視聴すれば修了となります。

2021年の介護報酬改定により、認知症介護に携わる職員で無資格の場合、この研修の修了が義務付けられました。(3年間の経過措置あり。完全実施は2024年から)

参考:2024年4月より無資格者の認知症基礎研修の義務化

2.認知症介護実践リーダー研修

認知症介護実践リーダー研修は、この記事で解説している認知症介護実践者研修の上位研修です。

専門的な認知症介護の技術や知識だけでなく、認知症介護に携わる職員のリーダーとして、指導や調整をするためのスキルも学びます。

他の認知症関連研修と比べて受講条件が厳しく、研修も講義・他事業所での実習・自事業所での実習があり、意欲的に臨む必要がある研修です。

試験はなく、全過程を受講することで修了になります。

認知症介護実践リーダー研修の概要
内容認知症介護の専門的知識・スキル
認知症介護に携わるチームのマネジメント
受講するための資格認知症介護実践者研修の修了から1年以上経過
認知症介護業務に5年以上従事
介護施設・事業所で職員を指導する立場にある・予定されている者
※その他都道府県で異なる場合あり
受講する方法研修実施事業所を各都道府県のホームページなどから調べ、
必要書類を準備、郵送などで提出
※事業所により必要書類は変動
受講費用無料~5万円程度
※都道府県により異なる
受講時間一般的に3か月程度
受講するメリット就職・転職で活用できる
給与アップが見込める
介護業界で信用を得られる

3.認知症介護指導者養成研修

認知症介護指導者養成研修とは、認知症介護研修を企画し、講師として研修を遂行する指導者を養成する研修です。

認知症介護の専門知識や技術だけでなく、認知症介護のプロを育成するための教育スキルや研修プログラム作成のノウハウを習得します。

受講資格として、都道府県自治体または勤務先の代表者からの推薦があり、研修を実施する機関の「受講者選抜考査」を通過していること、医療介護に関する国家資格があり、介護業界で実務経験があることなどがあげられます。

医療介護業界で実績があり、勤務先だけでなく地域ケアを推進する役割を担えると認められた人が受講できる研修です。

認知症介護指導者養成研修の概要
内容認知症介護研修の企画立案
講師として指導・教育するノウハウ
受講するための資格自治体や勤務先からの推薦があること
実施機関の「受講者選抜考査」を通過すること
医療介護に関する国家資格を持つこと
介護業界で実務経験があること
認知症介護実践者研修・認知症介護実践リーダー研修を修了
※その他実施機関で異なる場合あり
受講する方法必要書類を準備し実施機関宛に送付
受講費用23万円
受講時間9週間

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認知症介護実践者研修に関するよくある質問

Q.認知症介護実践者研修を受けるために必要な資格や条件は何ですか?

A.認知症介護実践者研修の受講には、一般的に次の要件が求められます。

・認知症介護に携わった経験が2年程度以上あること

・介護福祉士と同程度の知識があること

・核施設で介護・看護のリーダーに類する立場になる予定があること

ただし、受講要件は研修を実施する自治体によって異なることがあるので、勤務地がある自治体のホームページで確認しましょう。

受講要件について詳しく読む>>

Q.認知症介護実践者研修は難しいですか?

A.試験はなくカリキュラムをすべて受講すれば修了となるので、資格取得(研修終了)の難易度自体は高くありません。

ただし実習やレポート提出などもあり、カリキュラムの内容を実際の職場で生かせるだけの深い理解が求められます。

Q.痴呆介護実務者研修とは何ですか?

A.平成12年度から実施されていた研修で、基礎課程・専門課程に分かれていました。

平成17年から現在の認知症介護実践者研修・実践リーダー研修に変わっています。

旧「痴呆介護実務者研修(基礎課程)」を修了していれば、認知症介護実践者研修を修了と同等として扱うことが一般的です。

【まとめ】認知症介護実践者研修でスキルを磨こう

この記事では認知症介護実践者研修について解説しました。

最後にこの記事の内容を振り返ります。

 

認知症介護実践者研修の概要
内容実践的な認知症ケアについて学ぶ
受講するための資格介護職員として2年程度の実務経験など
※都道府県により異なる
受講する方法各自治体のホームページを確認の上、申込書をダウンロード
必要書類と共に所定の送り先に送付
受講費用都道府県により異なる
相場:3万円程度
受講時間講義・演習:6~7日程度
自施設での実習:14~30日程度
受講するメリット就職・転職で活用できる
給与アップが見込める

認知症介護実践者研修の概要についてもっと読む>>

認知症介護実践者研修以外にも、国が定める認知症介護研修としては「認知症介護基礎研修」、「認知症介護実践リーダー研修」、「認知症介護指導者養成研修」があります。

まだ認知症介護に関する研修を受けていないのであれば、「認知症介護基礎研修」から、受講済みであればこの記事で紹介している認知症介護実践者研修を検討しましょう。

きっとあなたのスキルアップとキャリアアップに役立つはずです。

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